右之姿ニ相成候而者一方ならぬ義ニ付
御猶予奉願上候所御聞届と申義ニ者
無御座候得共婦人市中取払ニ不相成
然共山付在辺江所縁有之候族夫々に
手配いたし婦人手道具其外飯料
牛馬ニ付出し誠ニ騒々鋪相成申候且又
同日夜四ツ半頃遠藤又左衛門様御当所江
早馬ニ而御着ニ相成御城下表昨日御出馬
之由御役人中右様ニ付舛形迄夜五ツ頃迄
御出迎仕候得共前段之通ニ付御逢不申
三月廿九日亜墨利加一条ニ付御城下表より
当澗ヘ八ツ時一番手入船ニ付浄玄寺江
陸上リいたし候御人数七十人余惣大将
佐藤大庫様殿リ高橋七郎左衛門様
御籏頭近藤族様外御名前不相分
乗船御城下ノ吉祥丸
同廿九日汐首澳より異国船壱艘御殿ン山
より上ミ手江䑺去リ候趣ニ付兼而御用意有之
御合旗相立候所彼ノアメリカ舟と差心得
市中騒立候得共同舟ニあら寸何れ江䑺
去り候歟後日しら寸
三月廿九日市中売買米七匁三四分ニ候所
アメリカ舟近々当澗ヘ参リ候趣ニ付右米
直段同日中ニ八匁と相成売人不足買人
沢山随而右相場八匁四五分依之
御上様ニおいて重々御心配罷被有入米
御調子ニ相成候得共一向不足高千俵持主
壱弍軒より無之外仕入米五十七十俵位持主
有之候得共売米ニ不相成其節濱田屋宿
舟津軽米少々積下リ市中米売
商人江割合いたし直段七匁七分か八分か
是志ら寸翌朔日二日風筋よろしきニ付
秋田米加賀米二千俵余入込相場引下
同日三日四日ニ相成入米壱万俵余三月
下旬之模様ニ而アメリカ渡来候ハゝ大混乱ニ候
四月三日浜手之塀小路々々締向致而
白鳥新十郎様蛯子平五郎様代嶋剛平様
西村半次郎様村田林八様西村次兵衛様
并名主衆中市中締向キ兼被 仰付候
依之同日より代嶋様村田様名主衆壱人
市中見分ニ相廻候木品并釘類持合
無之候族者町御役所より書付相渡し
普請場ヘ被持遣し夫々木品釘願受候
当時不如意ニ而浜手囲方不相成廉者
御上様御普請ニ候間アメリカ舟退帆
之後願受木品其儘被下ニ相成
四月四日聞書
二月十日
江戸横浜と申所へアメリカ人凡三百
六十人程上陸いたし候趣其後十人廿人宛
上陸之由
浜手小路囲方之義者婦人子供不取払ニ付
四月五日有川村種田徳右衛門より願出
一 有川戸切地居合四百九十人
内百七十七人老若婦人三百十四人男女子供
今度アメリカ至来之趣ニ付両村引取方
不行届ニ候而も無之候得共そ山と申所へ
居小家壱軒相建申度趣外ニ助情同様
之米弐百俵差出旨願上候
触書
先頃武州神奈川沖江渡来之亜墨
利加舟箱館湊見置度旨申立有之由
右ニ付而者近々入津之程義難斗候依之
心得向兼而申渡候間急度相守可申候
一 亜墨利加舟当沖合江相見得候御合図
承リ次第町々在々人足共早々役所并
銘々承リ之場所江駈付可申候
但 風筋ニ寄御合図届兼候向も可有
之候間市中ニ而受継盤木を打端々
迄告可申事
一 異国船渡来之節浜辺江罷出或者
屋根上等江登リ見物致し候義堅く
不相成旨兼而被 仰出有之一同心
得居候筈ニ候得共亜墨利加船之義者
別段之義抔と心得違いたし見物ニ
出候而者以之外之事ニ候若右様不埒之者
有之ニおいてハ申開之有無ニ不拘召捕
入牢可申付候
一 アメリカ船滞留中者人夫相勤候者之外
商用たりとも小舟ニ而乗出し候義者勿論
海辺江罷出致徘徊候義堅御制止被
仰出候若心得違之者於有之者仮令
異舟江近寄不申候とも見当次第
捕押入牢可申付候
一 当澗居合之船ニ大小とも此節より不残
沖之口役所より内澗之方江繰入相互ニ
もやひを取並能く船繋いたし居
沖合ヘ異舟相見ヘ候御合図次第船頭
共者船中為取締銘々元船江乗船
居若無餘義用事有之橋船ニ而陸
地ニ往返之節者船宿より沖ノ口役所江
届出可申候追々入津之船ニも右之並合に
澗掛いたし可申候自分勝手ニ碇を入振リ
掛リ等致し候義不相成勿論異船退帆
無之内者出帆堅く不相成候間自他
之船頭共江船主船宿共より急度可
申渡候万一異国人共澗懸之船々江
漕寄候義有之候共決而不取合早々
元船江乗帰候様手真似ニ而相諭し
近付ケ申間鋪勿論此方より橋船ニ而
異舟江近寄リ不申様船手之もの共江
厳敷可申付候若心得違之もの有之ニ
おいてハ早々召捕入牢可申付候
一 アメリカ船下田江相越候節も上陸之義
決而不相成旨従
公辺被 仰渡有之彼等も上陸不致
趣申立候由ニ候得共下田滞船中ニ度々
上陸いたし尤乱妨ハ不致候得共所々
徘徊いたし猥ニ人家江立入食物等
乞求め或者婦女子ニ目をかけ小児を
愛し寺院抔ニ者長座いたし候由粗相聞
得候得者当湊江入船之上者上陸も可
致哉一体亜墨利加州之者共者婦人を
目かけ其上慾心深く候由ニ候間万一
上陸之上者不法之義可有之哉も難斗
誠ニ至而短気之生れ付ニ而聊ニ而も
彼等の意にさからい候得者腹立致し
候由万々一右等之所より争之端を
開候様之義有之候而者従
公辺厚く被 仰達候御趣意ニ相振レ
恐入事ニ候間如何様之義有之候共彼等ニ
対し決而手荒之義無之何分ニも穏ニ
申宥めさからい申間鋪候右ニ付被
仰出候通町々婦人小児之分者大野
市之渡最寄在々ニ而親類身寄
有之向者早々引移可申筈ニ候得共
左候節者数多之御百姓格別混雑
いたし不一方難渋ニ及候間立退之義者
御猶予被成下候ハゝ老若ニ不拘婦人
共者一切外出不為致急度取締候様
取斗申度段町年寄共申立之趣無
余義相聞得候ニ付願之通被 仰付候条
銘々厚く差心得不束之義無之様厳
鋪可申付候万一御手数品出来候節者
重キ御咎可被 仰付候
一 山背泊リ近辺築嶋桝形外其外亀
田浜七重浜等者場末にて何分御不
安堵ニも有之且人家も少く候得者夜
分抔蜜ニ上陸之程も難斗候間婦女
子之分者老若とも不残男子ニ而も十
二三才以下之ものハ最寄山之手辺江
所縁を求め近々之内早々為立退
可申候尤難渋之者共江者相応之御手
当可被下置候間町役人共より可申立候
一 御城下并在々江差辺又者他国より相越
逗留いたし居候もの共取調之上早々用事
為取片付帰郷為致可申候別而遊民躰之
者者早々為立払可申候
一 異船滞留中者牛飼之もの共箱館
市中并海岸近之村方江牛ニ而諸荷物
運送いたす間鋪候勿論浜辺近き野
山江放し候義堅く不相成候
一 炭薪青物類者日用之事ゆへ近
在より馬にて附出し候義者不苦候得共異
人共馬之陰を見掛候ハゝ直様村方まて
附慕ひ如何之義有之候而者不宜候ニ付
異人共上陸之様子承候はゝ馬士并在々
之もの共途中より早々引返し可申又用
済ニ而帰村之人馬も同様相心得申達
候迄者市中ニ扣居可申候
一 酒之義者異人共殊之外好物之由
聊ニ而も呑セ候得者手荒之義有之由ニ
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