官報(明治17(1884)年2月4日第177号)○農工商事項

明治17(1884)年2月4日付け官報第177号に、「○農工商事項」として天保年間の飢饉時に函館近郊で貴重な食料となった「ヲシメ昆布」に係る報告記事が掲載されている。

官報1884年2月4日177号
出典:国立国会図書館デジタルコレクション

○農工商事項
○ヲシメ昆布(農商務省報告)北海道ニ於テヲシメ昆布ヲ凶歳ノ食
料ニ供スルニ至リシハ天保年中ニ昉リタルモノゝ如シ當時北海道ハ
航運ノ道未開ケス墾闢ノ田圃亦少ク偶々天保四癸巳年ノ凶荒ニ際シ
食料殊ニ乏シク非常ノ困難ニ遭ヒタリ是ヲ以テ同八年中各村落ハ種
々ノ方法ヲ設ケ雑穀類ヲ儲蓄スト雖函館市中ハ之ニ充ツヘキ物品ナ
ク町會所吏員ハ百方商議ヲ盡シ遂ニ此ノ「ヲシメ」昆布ノ製ヲ発明ス
ルニ至リシナリ爾来凶歳ニ備ヘンタメ舊六ケ場所ト唱ヘタル渡島國
亀田郡小安村以北鷲木村ニ至ル拾八村ヲシテ之ヲ製造セシメタリシ
カ此ノ数村ハ町會所ヨリ毎年玄米貳百石許ノ貸與ヲ得テ(毎年十一
月貸與翌年六月金納)漁業ノ資ニ供シ来レル恩義アルカ故ニ其ノ冥
加トシテ壹ケ年壹村ニテ壹石許ノ製品ヲ納付スヘキコトヲ約シ爾来歳
々蓄積セシカ目今函館區ノ公儲トナル者現ニ六拾餘石アリ抑々其ノ
製法タル昆布ノ暴風激浪ニ遭ヒテ石根ヲ離レ浪打際ニ打揚ケラレタ
ル稺生ノモノヲ拾取リ之ヲ屋上ニ晒シ乾燥白色トナルヲ度トシテ更
ニ爐上ニ乾スコト二三日臼中ニ舂キ砕キテ細末トナシ之ヲ籾篩ニ掛ケ
以テ貯蔵ノ用ニ充ツ其ノ用法ハ凡壹合許ヲ鍋中ニ容レ適宜ノ水量ヲ
加ヘ火上ニ煮ルコト少時間忽膨脹シテ壹升餘ノ量トナルヲ期シ其ノ水
ヲ替ヘ又煮ルコト両三次ニシテ昆布ノ香全ク消ス此ノ時之ヲ米ニ和シ
炊キテ飯トナス既ニ日高國地方ノ土人ハ今猶此ノ昆布ヲ以テ鹿又ハ
鮭等ノ肉ニ和シ日常ノ食用トス現品ヲ貯蔵スルニハ之ヲ苞ニ包ミ土
蔵或ハ板倉等ニ蓄置クトキハ假令幾年月ノ久ヲ経ルト雖其ノ質毫モ變
スルコトナシト云フ

「官報. 1884年02月04日」、国立国会図書館デジタルコレクション、閲覧日2021年8月26日

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